岩千鳥の栽培、交配を始めて20年以上になります。最初の10年は枯らしの連続で、人の栽培方法を参考にあれやこれや栽培方法を変えたものです。また今考えると植替えの不徹底や冬場の水管理の勘違い等、彼女たち(岩千鳥)には悪いことをしました。
草友に岩千鳥の自生地を案内してもらい、大自然で咲いている岩千鳥を見て、その環境を肌で感じ、栽培方法の概念がガラリと変わりました。栽培方法を腰水栽培に切り替えたきっかけにもなりました。

自生地の環境を考える

水が滴り落ち、爽やかな風が舞う岩場のくぼみが岩千鳥の自生地です。その大きな特徴は次のような環境です。
1.岩場のくぼみで、腐葉土とシダや草の根が絡み合う好水性、好気性土壌。
2.常に水の雫が滴り落ち、流水、保水が十分。
3.岩場のため、適度な日照に恵まれ、常に風が流れている。
4.冬場も保水があり、寒さで凍りつく。

これらをもとに栽培のポイントを考えると、1.とにかく水が欲しい。2.日光が欲しい。3.風が欲しい。と考えられます。
 


腰水栽培

岩千鳥の自生地の環境に近い常に水と隣り合わせにする栽培方法です。私のように数多く栽培するには腰水栽培がベストで、現在もこの栽培方法を実施しています。
 

・水管理
腰水栽培では鉢が5mm〜1cmほど浸かるくらい水を鉢皿やトレーに注水しています。1〜3日で腰水が乾燥したら再度注水します。芽出し前の春先〜初夏と秋は腰水が無くなったら注水を繰り返します。7〜8月の夏場は腰水をなるべく溜めず、鉢表面の用土が若干乾いてきたタイミングで鉢が吸収できる水分を腰水で注入するか、上から水をジョウロで腰水が若干溜まる程度に灌水します。灌水は涼しくなった夕方以降にしてください。冬場も水を少なめにしますが湿り気を切らさないことが必要です。完全に乾く前にジョウロで灌水していれば大丈夫です。岩千鳥はある程度寒さには強く、霜柱で芋が浮き上がっても、鉢が凍り付いてもたくましく育ってくれます。(自生地の環境を考えればあたりまえですが。)
ただし関東地方以北では冬場のある程度の保温が必要で、温度変化が少ない凍りつかないところに移動させるか、芋を掘り出し少し湿らせたミズゴケにくるんでフィルムケースなどに入れ、冷蔵庫で2月下旬まで保管するようにしてください。凍らないようにと室内管理することは避けてください。1〜2月に芽が出てその後の管理に影響しかねません。
トレーや鉢皿は定期的に掃除をして、清潔な環境を心がけてください。

・鉢と用土
多数栽培しているので管理しやすくするため2.5号(直径7.5cm)のポリポットを使用しています。選別品はやや大きな8pのポリポットを使用しています。8cmポリポットは24穴のトレーにも納まるので重宝しています。球根が大きくなれば球根の大きさによって鉢の大きさは変えますが、大きくなっても3〜3.5号ぐらいまでが管理するにも適当だと考えています。
基本的な用土は良く水洗いした硬質鹿沼土と軽石系(日向土や軽石)を用います。ゴロ土と中層土は鹿沼と日向土、ゼオライトの混合用土、植え土は硬質鹿沼土、軽石系、川砂(朝明砂、矢作砂など)の混合土にゼオライト、ヤマゴケ、ヘゴチップ、バカス(サトウキビの絞りカスを発酵させたもの)を混ぜたものを使います。鹿沼土がメインですがその他の配合は灌水方法によって変わるので当園での配合割合を図で記載しておきます。
軽石の量で鉢の乾き方が大きく左右されますので、腰水を多めの方は乾きやすいように軽石を増やす、腰水管理しない方は乾燥しすぎないように軽石を減らす等、栽培方法にあった配合が必要と思われます。
始めての方はホームセンターで買える「山野草の土」でも十分育ちます。

・肥料
2〜3月の植え付けの時、球根に干渉しないように鉢の外周付近の中層土に少量の固形肥料グリーンキングを入れたところいい結果につながりました。(グリーキング5mmくらいの粒を1〜5球植え付けで1粒、5〜10球植え付けで2粒程度) その後は基本的には液体肥料の葉面散布やごく薄い液肥を中心に行います。肥料の影響で用土表面や水を張ったトレーに緑藻が発生しやすくイワチドリに悪影響を与えかねませんし、見た目にも不快感を感じます。用土表面の土の入れ替えやトレーの掃除は頻繁に行わなければなりません。
葉面散布は市販の液体肥料であれば特に種類を問いません。既定より濃い目の500倍でも大丈夫ですが用土表面に藻が生えやすくなります。1000倍程度がいいようです。その際、殺虫剤、殺菌剤を混入し、一緒に散布することも可能です。

・殺虫と殺菌
殺虫、殺菌は極力回数を少なくするのが望ましいですが、、3〜6月は病気、害虫が集中するので管理には注意が必要です。殺虫剤、殺菌剤は1000倍に薄め噴霧して使用しています。
特に花時期にはバタバタと倒れますので、殺菌剤の散布は欠かせません。原因は灰色カビ病と軟腐病と思われます。4月後半から5月いっぱいは10日に1回の割合で殺菌剤を散布したところ、病気の発生は格段に改善されました。アブラムシ、アザミウマなどの害虫は見つけしだい補殺し殺虫剤は極力避けますが、手に負えなくなれば殺虫剤を散布します。

・遮光と風と気温
遮光は50%が基本ですが、夏場などは遮光ネットを二重にしたりヨシズなどを利用して70%遮光ぐらいにし、暑さを避けて管理します。風は自生している環境から察し、常に風通しに気を配り、清々しい状態を保ちます。比較的暑さに弱い岩千鳥ですので作場の気温が35℃を越えると危険サインです。栽培所やその周辺に水をまいたり、水道に繋ぐ家庭用ミスト発生器などを使えば気温を2〜3℃下げる効果があります。

・植え替え
良作増球のポイントは1年に1回(1月下旬〜3月)の植え替えです。1球1鉢でも多球植えでも必ず実行しています。鉢全体が無理なら、上半分だけでも替えることをお勧めします。植え土をリフレッシュすることが栽培のポイントの一つで1年の作を左右し、病気の予防と株の充実に多大な影響をもたらします。


@ 2.5号サイズの硬質ポリポットを用意。管理しやすいようにすべて同じサイズで統一しています。
A ゴロ土には硬質鹿沼土、日向土、ゼオライトを使用。
B 中層も硬質鹿沼土、日向土、ゼオライトなどを使用。鉢の半分ぐらいまで入れる。
C ある程度植え土を入れ、鉢の側面を軽くたたくなどして土を若干締める。



D 軽く水をかける。
E ピンセットで植え土にくぼみをつけ、球根を置いていく(球根の上下に注意)。土が湿っていたほうがくぼみをつけやすい。
F 球根が隠れるまで植え土を入れ、鉢をたたくなどして再度土を締める。泥水が出なくなるまでジョウロで水をたっぷりかけて、終了。


余裕があれば、暑さが和らいだ9月に植え土2cmくらいを水道水で跳ね飛ばし(根が見えるくらい)新しい用土を入れ替えると球の増大と分球が促進されます。



11月ごろに葉が枯れ始めた頃、「ご苦労様。また来年も楽しませてください」と言えるよう頑張ってください。


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